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賢人が連れてきたのは小雪だったのだ。
白いふわふわのチュニックを着た小雪は、賢人の隣でちょこんと座っていた。この梅雨の合間の暑さに参っている様子だった。
原田はタオルで汗をふきながら、うう、とうなり声をあげ
賢人先輩は嫁があまり食がすすまないので、自分を出汁にしようとしているのだなと、この男にしては珍しく小さな脳細胞を働かせた。
「小雪ちゃん、みてごらん。原田は、こんなにがっつり食べるから、全く夏ばてしないんだよ。君ももう少し頑張って食べなくちゃ」
賢人は優しく小雪を諭しながら、「これはどう?」とあっさりとしたひらめを恋女房に勧めている。
「うーん。ヒラメだったら、なんとか平気かな。でも、アイスクリームじゃだめ?」
小雪は口いっぱいに巻物を頬張っている原田をちらっと見て、うんざりとした表情を浮かべ、パウチされているメニュウに目を戻した。
「アイスはデザートでしょ。大丈夫、原田君はお腹いっぱい食べたあとでも、アイスでもプリンでも付き合ってくれるから」
「そうだね。じゃ、ヒラメにチャレンジしてみる!」
原田はそこで
「賢人先輩、小雪ちゃんですが、ヒラメじゃものたりないでしょう。サーモンはどうですか?」
口にツナの脂をつけテラテラの唇で発言した。
ここで発言すべきだと判断したのだ。
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