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原田は迷っていた。帰り道の県道には回転すしのチェーン店が2軒あった。並んではいない。店舗だって集客ということを第一に考える。店と店の間には4キロほどの差はあった。
しかし郊外で信号もあまりない道なので、短くても車で5,6分あれば、行き来は可能だった。遠くの店にいくか、近い所で我慢するか、原田の頭の中を占めている悩みは、いままさにそれのみだった。
回転すし店を2軒はしご出来る、猛者というか、フードファイターだとしても、そんな大食漢は滅多にいないだろう。第一ずっと寿司ではさすがに飽きるのが普通だ。
しかし原田には、自分がグルメだというプライドがあった。
「マグロやイカは大差ないけど、巻物は違いが出る」という自説が彼を突き動かしていた。
彼は、マグロ、かんぴょう、きゅうり、たくあん、梅しば、納豆などの具を巻いたいわゆる細巻きはもちろん、いくら、ウニ、しらうお、ネギトロ、とびこに始まり、ツナやえび、アホガト、コーンにマヨネーズ、ミニハンバークにいたるまで芸術的にトッピングした軍艦巻きが大好きだったのだ。
向かっている1軒目より2軒目のほうが、豊富な種類の巻物があった。さらに海苔の乾燥具合も、遠くにあるすしジローのほうが抜群にうまかったのだ。
「少し我慢すれば、すしジローがすぐだ」と彼は意志を固くして、ハンドルを強く握った。
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