空蝉

2/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
 彼女と付き合い始めて、数か月経った。  直ぐ別れるものだと思っていたが、意外に続いている事に、彼氏である自分が一番驚いている。 「ーーねえねえ、今度さ、ゲーセン行かない? 新しいフィギュアが出たんだ! とってよ!」  そう言って、スマホの画面を見せて来たのは例の友達だった。画面には、今人気のアニメキャラクターのフィギュアが映し出されていた。 「ごめん、彼女が怒るからさ、二人では行けないんだ」 「……そう」  彼女はつまらなそうに、そして少しだけ悲しげに一言だけ呟いた。何故かその姿を見て、心に小さな痛みが走る。  それから学年が変わり、履修科目が被るものが少なくなったせいか、友達である彼女と過ごす日が少なくなっていった。 「ーーねえ、ねぇってば。人の話、聞いてる?」 「え? 何?」 「もう、またゲームばかりして」 「ごめん、これだけクリアさせてよ」  彼女の部屋で、恋人同士らしくのんびり過ごしながら、スマホゲームに熱中していると、彼女が不機嫌な声を出す。俺の言葉に、更にイラつきを見せた彼女は、「折角、旅行の計画をたてようと思って雑誌買ってきたのに! もう寝ちゃうから!」と怒って、ベッドでふて寝をし始めた。  ゲームくらい、少しだけゆっくりしたかったな。  彼女のその態度に小さくため息を吐き、「わかったよ、やめるから。雑誌見ようよ」と、声をかけると、暫くの間の後、小さな声で「うん」と返事をされ、俺は安堵の息を出した。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!