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「仲林くん。とりあえず、うちの中で話そう」
おばさんを意識して静かにそう言ったら、何も気付いていない仲林くんがパッと破顔した。
「ありがとう!泊めてくれるの?」
嬉しそうな仲林くんの大きな声が、フロアの通路に響き渡る。
それを聞いたおばさんの目が鬼のようにつりあがるのがわかって、背筋が凍った。
「静かにして。あの家のおばさん、騒音にうるさくてすぐ管理人に苦情出すの。これ以上睨まれたらヤバいから」
仲林くんを引っ張って、ひそひそ声でそう告げる。
そっと後ろを振り向いた仲林くんは、おばさんの形相に慌てて私のほうを向き直った。
「とにかく、スーツケース静かに運んで」
ひそひそ声で伝えると、仲林くんが黙って私にサムズアップする。
まだ仁王立ちでこっちを睨んでいるおばさんの視線に怯えながら、私たちは静かにその場を去った。
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