7.好きって思ってくれているなら。

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少し前までは先輩たちの輪の中にいる松野くんを見て羨ましいと思ったり、こっちを見てくれないかなと念を送ってみたりしていたけれど。 今はもう、それほどの感情が私の中になかった。 「滝宮さんは、混ざらないんですか?」 私たちの前に座って、静かにウーロン茶を飲みはじめた滝宮さんに問いかける。 「あー、うん。もうしばらくしたら、適当に抜けようかと思って」 滝宮さんが、笑いながらさりげなく腕時計に視線を落とす。 それを聞いた絢子が、ハッとしたように鞄からスマホを取り出した。 「そうだ。私も今日は早めに抜けるんだった。ヤバい。旦那から、帰る時間知らせろってメッセージきてる」 「まだ21時になったところなのに?」 「この前高校時代の友達と飲んだときに、調子に乗って終電逃しちゃったことがあって。それから、結構時間にうるさいの」 スマホに何かを打ち込みながら、絢子が顔をしかめる。
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