1558人が本棚に入れています
本棚に追加
◇
自宅の玄関のドアを開けると、イオが私のことを待ち構えるみたいにそこに立っていた。
「ただいま」
「思ったより遅かったね」
「ごめん……」
顔を合わせたイオの第一声が明らかに不服そうで、肩を竦めて謝る。
これでも、駅からは少し駆け足気味で帰ってきたんだけどな。若干、汗ばんじゃうくらいに。
わずかに肩を落としたら、イオが息を吐く気配がして、正面からがばっと抱きしめられた。
「おかえり、メェちゃん」
さっきの不服そうな声とは違う、抱きしめてくれる温度と同じくらい優しいイオの声がして、そのことにひどくほっとした。
「ただいま」
躊躇いながらイオの背中に手を回したら、彼がぎゅっと抱きしめ返してくれる。
イオの胸に摺り寄せるように額を押し付けたら、イオが私の左肩に頭をもたせかけてくる。
甘えるみたいなその行動にドクドクと胸を鳴らしていると、イオがすんすんと私の首筋に鼻先を押し付けてきた。
最初のコメントを投稿しよう!