7.好きって思ってくれているなら。

29/34
前へ
/240ページ
次へ
目を閉じて、少しだけイオのほうに顔を上げると、軽いリップ音がして額にキスが落ちてきた。 「おやすみ、メェちゃん」 やけに甘ったるい声で、イオがそれだけを私の耳元にささやく。 そのまま抱きしめる腕を解いたイオが、普通に私の隣に寝転がるから、なんだかとても拍子抜けした。 「お、やすみ……」 一応そう返したものの、何か違う……と思って、私はぱっと起き上がった。 突然起き上がった私を見て、イオが目を瞬かせる。 「どうしたの、メェちゃん」 呑気なイオの声に、私はひとりでモヤモヤとした。 どうしたの、って。どうしてイオは、人のベッドに潜り込んできておきながらこんなにもふつうなの──? 私はイオの言動ひとつひとつに、死ぬほどドキドキして、そわそわして。 それなのに、おでこにチューして「おやすみ」なんて。 それじゃ、全然物足りない! 最終的に至った自分の考えもどうかと思うけど。このままじゃ、イオのことが気になって余計に眠れる気がしない。
/240ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1553人が本棚に入れています
本棚に追加