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ところが、Kテレビから新しい企画が持ち上がり、祐樹の自信が揺らいだ。
祐樹が大学時代の同級生だったということを真宙から聞いたディレクターが、旬の絵になる二人が再会に湧く姿をカメラに収めたいと言い出した。それが発端で、映画に登場する場所を祐樹の案内で真宙と巡ることになったのだ。
真宙と祐樹が友情を深める様子をテレビで流せば、絵になる二人のことだから若い女性の支持を得て、映画が盛り上がるに違いないと説得され、日本を足掛かりに外国映画に進出したい祐樹は断り切れなかった。
だいたい、大学時代のままの顔でいることがいけない。再会に湧くだの、友情を温め直すという何の変哲もない話のはずが、変に疚しさを覚えてしまう。
真宙と顔を合わせるのは映画スタッフに囲まれている時だけで、時間的に会話も制限されると安心していたのに、真宙が撮影日より先に一人でロスに来ると聞いてひどく動揺した。
当日になり、真宙を迎えに空港に向かう途中にも、赤信号から青に変わったことに気づかず、後ろの車にクラクションを鳴らされて、自分に言い聞かせるようにAll right! alright!を繰り返すうちに、「何やってんだ俺?」と自分に呆れる始末だ。
空港のパーキングに車を止めて、これも仕事だと喝を入れ、出迎えの人々の中に紛れて真宙が出てくるのを待つ。なかなか出てこないのに焦れ始めた頃、ポンと肩を叩かれた。
振り向くと、そこには想像していたのと違う男が立っていた。
「嘘⁉ 詐欺だろ。写真と違いすぎ」
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