再会に揺れる心

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 会ったら何と言おうとか、どんな話をしようとか考えていたことが全て吹っ飛び、祐樹は口をあんぐりと開けたまま、真宙の頭のてっぺんからつま先までを順に追った。  十九歳の時には残っていた少年の面影が、今は頬の丸みも取れ頬骨から顎にかけてのラインが際立つ男の顔になっている。身体には偏りのない筋肉がバランスよくついて、まるでスポーツ選手のようだ。  祐樹が見分する間、真面目な顔をして立っていた真宙が、耐え切れないというように噴き出した。 「引っかかった! 大学の時の写真を祐樹に見せて欲しいとお願いしたんだ」  笑うと記憶の中のあどけない表情が覗く。屈託なく笑う様子は、告白を誤魔化した時の真宙に重なり、懐かしさといたたまれなさが同時に沸き起こる。メランコリックな気持ちを抹殺するために、祐樹は冷ややかな表情で真宙をじろりと睨みつけた。 「俳優がプロフィールを詐称していいのか? 一体何のためにこんなことをした?」 「俺、俳優じゃなくて、パフォーマーなんだ。今回の映画は水中のパフォーマンスが必要だから、YouTubeで話題になった俺に話が来たんだよ。普段は顔出しもしていない」 「何だそれ?」と胡乱気に見る祐樹を無視して、真宙がスマホを操作して写真の画面を開き、祐樹の前にかざした。
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