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最近、キレイになった?
その後。
「最近の桃子、なんだかキレイになったよね?」
女の子同士の間で、そう言われることが多くなった。
「特に、肌の艶が違う、って感じ」
「そうそう。何か特別なクリームでも塗ってるの?」
などと追及されると、
「まさかあ。まだ高校生だし、化粧品なんて使ったことないよ」
私は照れ笑いを浮かべて、誤魔化すのだが……。
まあ、嘘ではない。『化粧品』ではないのだから。
「人間のすることは不可解だね」
白鳩には、私の行動が理解できないらしい。
「公原桃子、なぜ君は、変身を解かないのかい?」
そう。
今の私は、常に『魔法美少女マジック・ビューティー』の状態を維持していた。
もちろん、初変身からずっと、というわけではない。それでは変身直前に着ていたセーラー服が失われてしまうので、あの時は一度変身を解除して、下着姿になってから再変身している。
そして変身状態のまま、フリフリの魔法美少女コスチュームを脱いで、私服に着替えた。
さらに、魔法美少女の状態では髪色や髪型がアレなので、地毛と同じ黒のヘアカラーを買ってきて染め直し、ヘアアイロンで強引にストレートに戻している。
この一苦労が、白鳩には理解できないのだろうが……。
こうすれば、変身したままでも、ほぼいつもの私。違うのは、肌がキレイになってニキビも消えている、という点。
でも、これが重要なのだ。
私が魔法美少女の活動を続けている理由も、善行ポイント云々ではなく、この美肌効果のためなのだから。
「あ!」
昼休みの屋上で、一人でお弁当を食べていたら、頭の中にSOSが鳴り響いた。
「出動だね、公原桃子」
いつのまにか飛んできた鳩が、私の肩にとまる。
小さなバッグを抱えて、私は人気のない場所へと向かう。
あまり使われていないトイレや体育倉庫など、いくつかの選択肢があるけれど、今日の場合は屋上だから、給水塔の裏でいいだろう。
バッグの中には、魔法美少女のワンピースと、白鳩からもらった認識阻害マスク、自分でコスプレショップから購入した乙姫ヘアの桃色ウイッグ。
これらを装備することで、私は、外見的にも『魔法美少女マジック・ビューティー』となるのだ!
「魔法転移!」
マジック・ビューティー姿の私が駆けつけた先は、校庭の東側だった。
妖魔に襲われているのは、サッカーをして遊んでいた男の子たち。というより、妖魔の向かう先にいるのは、その中の一人、滝椎斗だった。
またお前か!
心の中でツッコミを入れながらも、いつもの口上を述べ立てる。
「愛と正義と勇気の名のもとに、妖魔を滅する! 魔法美少女マジック・ビューティー、ここに推参!」
「見ただろ、昨日? あれが魔法美少女だぜ! いやあ、本当に凄く美しいよなあ……」
翌日の教室では、また滝くんが騒いでいた。
その魔法美少女、正体は私なのに!
……と言いたい気持ちもあるけれど、恥ずかしくて口に出来ない。漫画やアニメの変身ヒロインが正体を隠すのは羞恥心があるからだ、というのを、いざ自分がなってみると実感する。
ちょっと複雑な気持ちで、滝くんを眺めながら。
私は、心の中で決意するのだった。
いつか滝くんにも、魔法美少女マジック・ビューティーとしてではなく公原桃子としての私に対して、「最近、キレイになった?」って言わせてみせるぞ、と。
(「魔法美少女マジック・ビューティー!」完)
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