RAIN3 友達ってそういうこと

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「はい、お終い」  風吹が枝を茂みに放った時には既に二人は地面にのびていた。 「遠藤……これ……」 「あ? 三十分もすりゃ起きるだろ。軽い脳震盪起してるだけだし」 「いや……じゃなくて、この人たち、経済学部の先輩、だけど……」 「………顔見知り?」 「うん、まあ……あまりいい知り合いではない、けど」 「……とりあえず、コンビニでビール買って、帰ろうか」  風吹がそう言って歩き出す。蓮は、その様子に、笑い出した。 「コンビニ逆だよ」 「え? あ、ああ……」 「大丈夫。暗いし、多分……何かあるとしたら俺の方だよ」  蓮が視線を足元に落とす。  なんて、声をかけたらいいかわからなかった。  コンビニで酒とつまみを買って帰る。公園では、まだ二人がのびていたので、急ぎ足でその場を離れた。  公園を過ぎた辺りで、蓮がふと風吹の指を掴んだ。 「何? 気味悪いことすんなよ」 「いいだろ。俺、遠くから見たら女みたいだって、遠藤も言ってたじゃん」  蓮はそう言うと、更にしっかり指を繋いだ。  仕方なく風吹は手のひらで、その右手を包み込む。 「家着くまで喋るなよ。バレるから」 「ん……了解」  風吹は、小さく震える指先を握りこむようにして繋ぎ直した。  怖かったのか、これからあるだろうあの二人の報復が怖いのか、ただ単に寒いのか――その見当はつかなかったが、自分がこうすることで、蓮の負担が少しでも減るのならいいか、と思ったのだ。  手ぐらいなんだ、ガキの頃は集団登校とかで散々航生と繋いでたじゃないか。  そんな気持ちで風吹は家路を歩いていた。 「なあ、お前……あんな目によく遭うのか?」 「……喋るなって言ったの、誰だよ」 「あ、そっか」 「……遭うよ。俺って、なんか隙があるらしくて。たまに、酔い潰されて輪姦(まわ)されることもある」  声のトーンを落して、隣の風吹だけが聞き取れるように蓮はとつとつと話し始めた。 「え……なんだよ、それ……」 「ゲイだって、ノーマルだって一緒だよ。事件として扱われるかそうでないかの違いだけだ。そんな話、いくらでも転がってる」 「そうじゃなくて、お前、そんなの……受け入れちゃっていいわけ?」 「……何にも、感じないんだ。誰に抱かれても」  蓮が寂しく呟く。風吹は思わず握った手に力を込めた。 「本気で、人好きになったこと、ないのか? あの、維幸って奴は?」 「……高校の時、先生を好きになった。でも、俺さ……やっぱ遊ばれてたんだよ。だから、それ以来真剣に付き合ったことなんてない。維幸さんだってそうだ。あの人も、俺のことは毛並みのいい犬くらいにしか思ってないんだ」 「何だよ……それ……」 「遠藤、さっきからその台詞ばっかり」  唖然としながら歩く風吹に対し、蓮はくすくすと笑い出す。 「だってよ、お前……ちゃんとした恋愛した方がいいよ。いつか、壊れるぞ、ココ」  風吹はトン、と自分の胸を突付いた。 「ご忠告、ありがと」  それでも蓮は軽く受け流して笑った。
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