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正面の黒雨人は一旦、僕と距離をとった。
諦めたのか、と思った矢先。
勢いをつけ、抱きつく様に両腕に広げて突進して来た。
左右から、黒い水が包む様に向かってきた。
しまった、両側から来られると対応できないーーー。
「ユウさん、危ない! 黒雨人に直接触られると、意識を取られてしまいます」
テルの声に、それをもっと早く言って欲しかった、黒い両腕に飲み込まれるーーー、と目を閉じて、ボロ傘を握りしめた。
次の瞬間。
ダダダダダダ、と銃声が僕の鼓膜をつん裂いた。
―――今度は何だ、もう勘弁してくれ。
僕に襲いかかった黒雨人は、僕に触れる既のところで空中に弾けた。心臓の辺りにある白い光の玉が弾け、体全体は空中に黒い粒になり、散った。
「おいおい、そのボロっちい傘は何だ? そんなのが武器になるのか? 不良品じゃねぇの?」
男が空中に散った黒い水滴を掻き分けながら、僕に近寄ってきた。
彼は茶髪で銀色の軟骨ピアスをしており、黒い傘を銃の様に構えている。
降っていた雨は黒色から透明に戻っていた。
「え?」
「え、じゃねーよ。新人。そのだらしない傘は何だ。前例のないポンコツデザインだな。骨組みだけって、最悪かよ。武器はおろか、雨を防ぐ普通の傘以下じゃねーか」
「リョウさん。黒水から出て来た、れっきとした雨傘ですよ。私が保証します」
「テルが保証してもなぁ……」
僕はリョウと呼ばれた男の持っている傘をまじまじと見た。
閉じた傘だが、先には銃口があり、柄の部分はトリガーになっている。
「リョウ、さんの武器、というか傘、は、それ?」
「おう、俺の相棒」
不公平だ、と自分の傘を見たが、銀色の骨組みだけのボロ傘には変わりなかった。
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