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「どうしたんだ、ユウ。そんなに息切らして」
病室に入るとケイは笑顔を浮かべていた。菓子パンを口に運んでいる。
「良かった、目が覚めたんだな?」
「目が覚めた?」
「そうだよ、お前は黒雨人に襲われて、昏睡状態で…」
彼は顔をしかめた。
「何、変な事、言ってんだ? 俺、食あたりで入院したんだぞ。恥ずかしいから友達には言わないでくれって、言ったのにオカンが勝手に……」
「食あたり?」
「そうだよ。昨日の夕食の牛肉に当たって、ひどかったから念のため入院しただけ。担任から聞いただろ?」
「あ、え、あ、そう、だったか、あ、アハハ」
僕は混乱しながら自分の頭をかいた。
手にはビニール傘のみが握られている。
どこから夢で、どこから現実なのか?
それとも今、まだ夢を見ているのか?
自分の身に起きている事がいまいち把握しきれない。
「ユウ、明日には退院だから。明後日には学校に行く。文化祭があるからな」
「ああ、そうだった、な」
僕は相槌を打って、イベントだな、と小さく呟いた。
「高校の重大イベントだよ。まぁ、どうせ、ユウが居る時点で、雨が降って、屋外展示は中止になるだろうけどな」
ケイは薄く笑った。
続けて、文化祭が壊れるのが楽しみだ、と小声を漏らした。
僕は耳を疑い、目を見開いた。
「なーんて、ちょっと不穏な発言だったか、今のは」
冗談だと気づき、ほっとした。
僕の嫌いな面倒事をまさか、友人のケイが連れてくるはずなんてない。
「びっくりした。ケイもそんなブラックジョーク言うんだな」
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