黒雨人 ―black rain―

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* 「どうしたんだ、ユウ。そんなに息切らして」 病室に入るとケイは笑顔を浮かべていた。菓子パンを口に運んでいる。 「良かった、目が覚めたんだな?」 「目が覚めた?」 「そうだよ、お前は黒雨人(ブラックレイン)に襲われて、昏睡状態で…」 彼は顔をしかめた。 「何、変な事、言ってんだ? 俺、食あたりで入院したんだぞ。恥ずかしいから友達には言わないでくれって、言ったのにオカンが勝手に……」 「食あたり?」 「そうだよ。昨日の夕食の牛肉に当たって、ひどかったから念のため入院しただけ。担任から聞いただろ?」 「あ、え、あ、そう、だったか、あ、アハハ」 僕は混乱しながら自分の頭をかいた。  手にはビニール傘のみが握られている。  どこから夢で、どこから現実なのか?  それとも今、まだ夢を見ているのか? 自分の身に起きている事がいまいち把握しきれない。 「ユウ、明日には退院だから。明後日(あさって)には学校に行く。文化祭があるからな」 「ああ、そうだった、な」 僕は相槌を打って、イベントだな、と小さく呟いた。 「高校の重大イベントだよ。まぁ、どうせ、ユウが居る時点で、雨が降って、屋外展示は中止になるだろうけどな」 ケイは薄く笑った。 続けて、文化祭が壊れるのが楽しみだ、と小声を漏らした。 僕は耳を疑い、目を見開いた。 「なーんて、ちょっと不穏な発言だったか、今のは」  冗談だと気づき、ほっとした。 僕の嫌いな面倒事をまさか、友人のケイが連れてくるはずなんてない。 「びっくりした。ケイもそんなブラックジョーク言うんだな」
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