2,夜の襲撃者

2/5
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
 孤児院での診療から数日がたった。あの日以来チンピラなどに絡まれる事は無く、アレンとシエルは平穏な日々を過ごしていた。  だが、とある日の夜。状況は一変する。  午後の診療も終わり屋敷に帰ってきたシエルは、いつもの通り夕食を採っていた。 「……おいしい。今日のスープは、いつもよりあっさりしていますね。魚介類を使っているのかしら?」 「ええ。市場で新鮮な魚を買うことができたので、ぜひシエル様に食べていただきたいと、メイド長が」 「そうでしたか。では、後でマリーには礼を言っておかないと」 アレンとの会話を楽しみながら、夕食を楽しむシエル。やがて料理を全て食べ終え、口直しに紅茶を手に取った直後。屋敷の外から、何やら騒音が聞こえてきた。 「何かしらこの音。動物?」 「やけに騒がしいですが……」 そう言いながら、アレンは耳を澄ます。よく聞くと、騒音の中には悲鳴のような声も混じっていた。 (あぁ、そういう事か) 音の正体が分かったアレンは、いつになく真剣な表情でシエルの方を向いた。 「シエル様、私は一度外の様子を見て参ります。その間に、シエル様は連絡魔法で憲兵を呼んでおいていただけますか? もし仮に音の正体が泥棒などでしたら、すぐに引き渡せるようにしておきたいのです」 「わかったわ。憲兵にはしっかり連絡しておきます。気を付けてね、アレン」 「わかっております。無茶はいたしません。メイド長、シエル様を頼みます」 「承知いたしました」  恭しく頭を下げるメイド長に後を託し、アレンは駆け足で屋敷の外に出た。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!