3,“彼女”の告白

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「ちなみに、性別を偽っていたのは、女暗殺者としてある程度名の通っていた私の素性が万一バレてしまった場合、シエル様に危険が及ぶと考えたからです」 「そう、だったの……」 執事の衝撃を過去を知り、言葉が出ないシエル。そんな彼女を見つめながら、は静かに言った。 「ですが、どんな理由があれ、主人を偽り続けてきたのは事実。しかも私は、多くの命を殺めてきた、薄汚い外道の一人。人々の命を救うシエル様のお側にいる資格など……」 そこまで言い掛けた時、シエルが手元のシーツを握り締めた。手の甲を少しずつ濡らしながら、喉から絞り出すように言葉を発する。 「そんな悲しいこと、言わないで」 「え……?」 「側にいる資格とか、そんな悲しいこと言わないで!」 珍しく声を上げながら、必死に訴えるシエル。その宝石のように美しい瞳には、大粒の涙が浮かんでいた。 「貴方が来てくれて、私は嬉しかった。幼い頃から両親とも中々会えなくて。メイド達はいたけど、主従関係からかどこか距離があって。でも、貴方は使用人という壁を越えて、私に接してくれた。常に私のことを気づかって、支えてくれた。貴方がいたから、私は医療魔法師として。ルフォール家の後継ぎとして、頑張ってこれたの。貴方がいないと、私は歩けないの。だから、どこにも行かないでよ。私を一人にしないでよぉ……!」  嗚咽を漏らし、いつもの丁寧な言葉使いを崩してまで、アレーナを引き止めようと叫ぶシエル。アレーナは思わず、傷の痛みも忘れて体を起こし、主人を抱きしめた。 「申し訳ございません、シエル様。私は、再び愚かな行いをする所でした。もう二度と、あんな戯れ言は申しません。いつまでも、シエル様のお側にいます。いつまでも、ずっと……」  二人は涙が枯れるまで、互いを抱きしめ合った。もう二度と、離れない。そう誓い合うかのように。
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