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都内某所にひっそりと佇む、築年数ウン十年はくだらないボロアパートの2階の角部屋、201号室。
そこの住人である街田惣介――の、同居人である、照田クンと犬橋と猫山、そして紅一点のアイコさん。
同居人と言っても彼らは人間ではないのだが。
犬橋はパグ犬似の元保護犬だし、猫山は不法侵入から居ついたブチ柄の元野良猫。アイコさんは唯一ペットとして長年飼われている年増なオカメインコで、照田クンに至っては――この部屋の主、サラリーマン惣介さんのお手製てるてる坊主なのだ。
ちなみに照田クンの頭の中には丸めたティッシュしか入っていない。
しかもこのアパート、基本ペットNG物件なのだが、惣介さん曰く大家の大矢さんから入居早々
「どうせ取り壊しもそんな先の話じゃないし、近所迷惑にならないんだったら好きなの飼っても良いよ」
と、“ペットOKだけど長くは住めないから次の引越し先考えといてね”と、遠回しに引導を渡されたとか何とか。
ひそかに実家のアイコさんを連れて来ようと目論んでいた惣介さん、 よほど嬉しかったのか
”取り壊しもそんな先の話じゃない”
の文言を脳内から勝手に消去。
そんなわけで、入居からそろそろ1年が経とうとしている現在、絶賛お部屋探し中なんだそうな。
そう――惣介さんは少々変わり者なのだ。
変わってると言えば、同居人(?)たちも大いに変わっている。
ちょっと変わった大家さんから謀らずも住民権を得た彼ら。
揃いも揃って、人間に姿を変えられるという。ただし、期間限定。
それは満月の夜――
惣介さんが部屋を留守にしている間だけ、人の姿に変わることが出来……否、出来ると言うより本人の意思とは無関係に変わってしまうのだ。
何て言ったっけ。逆狼男の法則? 満月は見なくてもOKらしいけど。
そんな中、生き物ですらないてるてる坊主の照田クンは、自分は人間で、この部屋の主だと思い込んでるんだとか(アイコさん:談)。
最も――照田クンの頭の中は丸めたティッシュしか入っていないので、それはそれで仕方がないのかも知れない……
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