照田クンの日常

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 惣介さん以下同居人たちが暮らすボロアパートの一室は、和室二間に台所がついた、一人暮らしには申し分のない広さ。  ところどころ砂壁が剥がれ落ち、畳もいい塩梅に変色していて、否応なしに時の流れを感じさせる。  そんな加齢臭漂う古びた和室の中央に、ちゃぶ台がポツンと一つ置かれ、そのちゃぶ台を囲んで、照田クンとアイコさん、犬橋、猫山が座っていた。    今宵は美しい満月が夜空で輝いている。 「……で?」  照田クン、不審そうに三人を見ている。  頬が垂れ気味なごっつい面構えの犬橋。  茶と黒とシルバーのまだら髪が印象的なハーフイケメン、猫山。  チークが派手めのクールビューティー、一番年上と思われるアイコさん。    なかなかのナイスバディだ。 「あなた方、一体、何者なんですか?」 「前にも言ったと思うけど、俺は犬橋。こっちのスカした野郎が猫山で」 「私がアイコさん」 「自分にさんづけなんだ……」 「仕方ないじゃない、名前なんだから」  言い忘れていたが、アイコさんの名前はアイコまでが名前だ。 「では、犬橋さん、猫山さん、アイコさん……さん」 「アイコさんで良いわよ」 「何であなた方がここにいるんですか?」 「何でって――こに住んでるからに決まってるだろ」 「……」  どう見ても一番怪しそうな犬橋が答える。  照田クンの表情から察するに説得力はイマイチか。 「無駄よ犬橋。彼、すぐ忘れちゃうんだから」 「そうだよ、むしろ良く知る間柄なのにさ」  アイコさんの言葉に相槌を打つ猫山。 「むしろ、全然知らないンですけど」 「俺達はあんたのこと良~く知ってるぜ。なっ?」  ニヤリ笑う犬橋。だから怪しすぎるって。 「だっていつも見てるから」 「いつ……も?」  照田クン、アイコさんの言葉にごくりと唾を飲み込んだ。
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