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私は、小説を書く。千花の名前で、小説の投稿サイトに作品を投稿している。
本を読むのも大好き。それは、千くんの影響だ。
千くんは、本の虫だった。学校の行き帰りに、よく自分が読んだ本の内容を身振りを交えて語ってくれた。頭の中では、ドラゴンや魔法使いがびゅんびゅん飛び回った。私がおもしろがるものだから、千くんは次から次へと違う本を読み、披露してくれた。そのうち私も読むようになり、2人で話が盛り上がった。
中学に入る頃に、千くんの家は郊外に新しい家を建てた。あんなに一緒にいたのにすっかり疎遠になり、高校も違ってしまった。今頃、どうしているかなと、時々思い出したりする。
SNSのアイコンに、赤い丸が付く。
さっき投稿したシロツメクサを誰かが見てくれたのかな。
開けて見ると、最近交流のあるtrillionさんだった。
『本当に、妖精たちが、くすくすと笑っているみたいですね』
口元が思わず緩む。私の考えが認められたみたいで、嬉しくなる。
フォローしている人も、フォローしてくれている人も、創作をする人ばかりだ。だから、こんな妖精の例え話をしても、誰も笑ったりしない。
そして、trillionさんは、よく反応してくれる。
どうやら私と同じ高校生の男子らしい。彼も小説を書く。そして小説投稿サイトで、作品を公開している。
読んでみると、異世界のファンタジーが多い。
でも私は、彼の現代の高校生を描いた作品が好きだ。何気ない日々の様子なのだ。友達と気になる女子の噂をしたり、でもどうにもならなかったり。毎日、これでいいのか? とため息をついたりする。
更新されると、すぐに読む。等身大の悩みや切なさが感じられる。
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