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***
しかし。
幸せは、長くは続かなかった。
「……フレイア」
姉は、部屋に閉じこもったまま出てこなくなったフレイアに。不憫そうに、しかし厳しい声で言ったのだった。
「わかっていたはずよね。……人間は、百年も生きることができない。とても儚い生き物なのよ。いつか必ず別れが来るのはわかりきっていた。その上で、アルフレートと愛をかわすことを選んだのではないの?」
「……ええ、わかっています。わかっています、お姉様」
鏡台の前で臥せったまま。振り返ることもなくフレイアは告げた。
「けれどもどうして……その別れが、たった一年で来ると思いますか……!?」
アルフレートは、あっけなく死んだ。彼の性格を鑑みれば想像がつく話であったのかもしれない。彼は、馬車の前に飛び出してしまった子供を庇って撥ねられた。そしてそのまま、帰らぬ人となってしまったのだ。
いつか来る別れ、わかっていたはずだった。けれどもそれは、彼がおじいさんになって、寿命で死ぬまでであるとばかり思っていたのに。
――わからない。分かりたくもない。どうして人間はこんなに脆いの?馬車に轢かれた程度で死んでしまうの!?あの人は、あの人はみんなに愛されていた。あの町に必要な存在だった。そんな人がどうして、こんなあっさりと死ななければいけなかったの……!?
「フレイア」
泣き暮らすフレイアに、ミーティアは続けた。
「わかっているわね。貴女がこのまま、彼のことばかりを想って泣いていたら……世界がどうなってしまうか。わかっているなら早く顔をあげなさい。貴女は、太陽の女神であるということを忘れないで」
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