魔法じゃなくても

　それからまた、僕は佳奈ちゃんを見に来るようになった。
　肌が綺麗になると、自信もついちゃうのかな。笑顔が増えて、愚痴が減ったものね。
　ほら、君が笑顔だと、周りの皆もついにこにこしちゃう。
「あれ？　最近、キレイになった？」
　とびきり笑顔の男性が、鏡を覗く佳奈ちゃんに話しかけてきた。あ、このかっこいい子、佳奈ちゃんが気になってたひとだよね。そのセリフ、僕が言ってあげたかったんだけど、また怖がらせたらいけないからしょうがないな。
　お化粧直しながらこっちを見る佳奈ちゃんは、はちきれんばかりの笑顔を咲かせている。あらら、後ろで美里ちゃんがガッツポーズとってるよ。
「佳奈、第一歩クリアじゃん！」
　いつの間にかすごい仲良しになってるし。なんだか僕まで嬉しくなるよ。
「頑張ったね」
　それも、僕が言ってあげたかったんだんだけどね。
「ありがとう、美里さん。それから…」
　と、佳奈ちゃんは鏡(僕)の方を見た。
「あなたも」
　にっこり笑った佳奈ちゃんにドキッとする。え？　まさか僕に？
　佳奈ちゃんは満面の笑みで鏡をしまった。