平和のモデル

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「リンゴを均等に分けよう」 僕、大男、小男の3人はリンゴを見つめた。 特に前置きはない。 「リンゴは10個。それぞれ3個ずつ貰って、最後の1個を3等分かな」 僕がそう言うと、大男が口を挟む。 「アァ? なんでオメェが仕切っているんだよ!」 「いやいや、解決策を述べただけだけど……」 「でもよぉ。1個のリンゴを3等分って、思っているよりも難しいぜ」 大男が言うと、小男も頷く。 「ですね……切り方をいろいろ考えましたが、均等は難しそうです」 ならば。 僕はリンゴを1個とり、遠くに向かって全力で投げた。 我ながら綺麗なフォームだった。 「どうです? これでリンゴは9個。それぞれ3個もらおう!」 しかし。 私の思いとは裏腹に、2人はとても怖い顔をしていた。 「オメェ、なんてことするんだ! 1個まるまる無駄にするなんてよぉ……」 大男が嘆く。 「リンゴは形も大きさもバラバラ。たとえ3つずつに分けても、本当の意味で均等でしょうか? 尊い1個の犠牲が本当に必要だったでしょうか?」 小男が訴えた。 僕は崩れ落ちる。 なんてことだ……僕はとんでもない間違いを犯したのだ。 これでは3人とも幸せにはなれない…… 「ああどうか、もう一度チャンスを!」 僕は心の中で叫んだ。
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