カイリの出生

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まだ魔力は本当にチョットしか使えないので、トコトコと昨日と同じ道を歩いていく。 昨日はとても長く感じたが、誰さんを背負っていないせいか、昨日よりもすごく近い。 王居が見えてくると、私はそっと様子をうかがう。 昨日と同様、あたりには誰もいない。 一国の王子なのに、私の住んでいる宮と対して変わらない大きさに鮮やかさ。 まぁ、これだったら潜り込みやすいね。 一人、洗濯物を干しに年老いたメイドが歩いてくる。 歩き方や立ち姿、そもそも洗濯物を干すなんて貴族がするはずないから、メイドであっているだろう。 メイドが立ち去ると、メイドに似た服を魔法で出して、着替える。 はぁ、まだこんな事しか魔法が使えないなんてちょっとショック。 バクバク音を立てて鳴る心臓を抑えながら、正面から……はやめて裏から中へ入る。 確かラットはいつもここから出入りしていたような。 あった。 涙宮と作りは同じらしい。 となれば、私の部屋は二階の南の方にあるから、取り敢えずそこに行ってみよう。 二階へ行く階段を登りきると、ばったり昨日の執事と出会ってしまった。 ラットが普段するように、ペコリと頭を下げる。 特別気にするようでもなく、通り過ぎていく……と思ったら、声をかけられてしまった。 「あなた、メイドですか? 幼いのに大変ですね。」 ホッと胸をなでおろす。 って、まだなでおろしちゃ駄目か。 「はい。では失礼いたします。」 もう一度ペコリと頭を下げると、背を向けて歩いていく。 少し歩くと、壁に手をついてどっと息を吐き出した。 「な、なんとか乗り切ったぁー。」 確か、と言うか今までの流れだと個々を曲がればアナスタシウスの部屋に着くだろう。 どの宮殿の作りも、主の部屋のドアはきらびやかに飾られ、一番大きい。 そして二階から四階にある。 1歩1歩扉へ近づいていき、ついにドアノブに手が触れる。 ガチャリ。 妙に大きく感じるドアの音にびっくりしながら、すぐさまドアを閉める。 「誰だ。」 ホッとしたのもつかの間、後ろから声をかけられる。 恐る恐る後ろを見ると、冷たいものが首に当たった。 「ゆっくりとこっちを向け。」 低い男の人の声が届く。 うつむきながら振り返る。 これがいわゆる子供の興味心かと思いながら、チラリと上を向いた。 金の瞳に青い髪。 そしてこの記章はリリアーナ王国の騎士団に預けられるものだ。 誰かわかった気がする。 リリクレール・カイト!! 「本日はリア王国の王子が熱で寝込んでいる。立ち去れ。」 虫でもはらうかのようにシッシッと手を振られる。 は? 私の父親の癖に何をするの? ママを探してるんじゃないの? 沢山の疑問が頭を横切り、最後にこの結論にたどり着いた。 「ハッ! 騎士のクセに侯爵ならまだしも第四貴族にまで入りやがって……。 たかが騎士の、リリクレールの分際で私に触るな!!」 キレてしまった私は魔力をフルで体から放つ。 パパは驚いたように後ろに仰け反ると、シールドを張った。 「なっ、何だこの魔力は……! リリ以外で初めてだ。」 私はパッと姿を消すと、森の中に移動した。 心臓が、痛い! 苦しいよ。 まだ回復していないのに魔力の全てを使い切った事により、体がおかしくなっている。 「うっ、カハッ!」 口から血を吐き出すと、地面に倒れ込んだ。 心臓を抑えながら、野垂れ苦しむ。 意識が飛んでくれたらいいのに、こういう時に限ってそんな事にはならないらしい。 数分経つとやっと立てるようになり、ヨロヨロと宮まで戻った。
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