絶望

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絶望

今日の服は、ピンクの着物風のスイングフレアワンピース。 フワフワのスカートと帯紐が、風になびいて美しい。 が、今はそんなことを考えている場合ではない。 私は急いで階段を上りきると、昨日と同じ扉を勢い良く駆け上がる。 「誰だ!」 デジャブ、では無い。 今日の私は一応ちゃんとした服を着ているから相手にはされるだろう。 「私は涙宮に住む者だ。 リリクレールの者。1つ問うが、リリアーナ王国の王太子姫殿下は現在第二子を妊娠しておるか?」 少し昔の喋り方で話してみる。 「はい。第一子は重い病気で亡くなってしまいまい、現在第二子を御妊娠中でございます。他に御質問はありますでしょうか?」 やっぱり宮に住んでいるといったら、今回は丁寧に話してくれた。 だが私は頭を抱えた。 なぜ魔力で気付かなかったのかが不思議だ。 「ではもう少し問う。第一子はカイリと言うそうだが、何か特徴は聞いておらぬか? ……リリアーナ王国王太子姫殿下の婚約者よ。」 イヤミを込めて私のことを質問する。 「!! 確か青い髪に金の瞳が特徴的だったとか。ですがまだ赤ん坊の時の事なのでよくわかりません。」 「そうか。」 すかさず私が返事をする。 パパはなぜそこまで聞くのか不思議そうな顔をしている。 パパが口を開いた途端、私も口を開く。 「私の名前は、カイリだ。 リリアーナ王国王太子姫殿下であるリリアーナ・リリから生まれた第一子。 リリアーナ・カイリだ!!」 最後は叫ぶように名乗ってしまった。 私の名前を聞いて、パパがワナワナと震え出す。 「カイリ…カイリなのか? よかった……!」 抱きつこうとした手を振り払い、杖を出す。 その杖の大きさに驚き、後ずさる。 「無礼者! 死んだと言われていた子供が生きていたのがそんなに嬉しいか! たかが婚約者の分際で私に触れるな! お前に私の父親になる権利はない!! 二度と私の前に現れるなぁ!!」 巨大な風と共にパパが消える。 また大魔法を使ってしまった。 だが大魔法を連続して使ってるおかげで魔力が増えた。 私は息を切らしながら捨て台詞を吐く。 「あんたらなんかに国を任せられない。いつか国を乗っ取ってやる。」 「カイリ……。」 チラリと寝間着姿のアナスタシウスが見えたが、サッサと部屋を出ていった。 この日からカイリの中にある心の闇が大きくなっていった。
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