絶望

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「カイリ様。さぁ、今日は入学式ですね! しっっかりとおめかし致しますね!!」 張り切ったラットとは裏腹に、少し冷めている私。 「ありがとう。ちゃんと王女らしく、お願いね。」 あの日から宮には沢山のリリアーナ王国の使いがやってきた。 勿論、パパもきた。 ママは産休で来なかったけど。 私はラットに気付かれないよう、強力ななシールドと封印魔法を使ってその人達を避けてきた。 サファイア学園に入れば、王族でも関与する事ができない。 だから今日を乗り切ればいいのだ。 今までラットが居たおかげで、私は服を着ることも、脱ぐ事も一人で出来なくなってしまった。 その為学園にもラットは連れて行くことにしている。 「では髪を結いますね。今日はこの唐装服用の(かんざし)を使いましょう。 今日は唐時代の服装にするので、少しメイクもしましょう。」 「メイクはいいわ。花細だけにして頂戴。」 私は鏡越しの自分を見つめながら答える。 表情が固いな。 「あら。きっとお美しくなりますのに……。ですけれどカイリ様がそう仰るのならそういたします。 ……はい! 完璧です!」 相変わらず仕事が速いな。 頭の上の方でお団子のように結った髪に、主を守ると言われるサファイアの簪が飾ってある。 ちょっと派手だけど、初日はこれでも良いでしょう。 今の魔法界の流行りは古代中国風の服やメイクですものね。 「ではお召し物を変えましょう。」 と言って出されたのは、白と薄紫の唐装服。 薄い色で構成されているのに、派手なデザインが、私的には好きだ。 特に袖が長く繕ってあり、動くたびにヒラヒラと袖が舞う。 ラットが王女らしい服を特注で作ってくれたおかげだ。 「終わりましたよ。とっってもお美しいです!! あっ! もうそろそろ陛下との謁見の時間ですね。荷物は積んであるので早く行きましょう。」 ラットに急かされ、私はドアをくぐる。 宮を出れば私は一国の王女。 礼儀をわきまえなければ。 12年間、共に歩んできた宮を見上げ、ゆっくりと足をすすめる。 学園へ直行する馬車には、大量の荷物が入っていた。 ラットいわく、学園の寮にはもっと沢山の荷物が運ばれているとか。 国王陛下の住む宮に着くと、私と同じく学園の馬車が止まっていた。 アナスタシウスの乗っていく馬車だろう。 あの日からアナスタシウスとは会っていない。 正直言って、アナスタシウスと合わせる顔が無いのだ。 「国王陛下。お時間を取らせていただいてありがたく存じ上げます。 12年の間、わたくしリリアーナ・カイリを匿い、この度はリア王国の娘として学園への入学の許可、誠に嬉しく存じ上げます。この御恩、リリアーナ王国王女のわたくしが、責任をもってお返しいたしますわ。」 胸に手を当て、深々とお辞儀をする。
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