絶望

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学園へ近づくに連れ、徐々に馬車が増えていく。 魔法のおかげで音も揺れもなく地面に降りると、例の御者がドアを開けてくれる。 「学園へ着きました。お荷物は後ほど運んでおきます。」 コクリと頷く。 「お手を。」 ドアのそばに、アナスタシウスがいた。 その後ろには、例の執事もいた。 5年間見てないうちに、大きくなったようだ。 そっと手を添えると、管理棟へ向かう。 「ずいぶん大きくなった気がしたけど、やっぱりアナスタシウスはアナスタシウスね。」 「カイリこそ、まだ指輪つけてるじゃないか。」 「約束だからよ。」 サラリと受け流し、会話は途切れた。 さっき陛下といた時よりも居心地が悪い。 私達のような王族は、会場へ入る時はエスコート付きで名前を呼ばれてから入る事になっている。 ここまで来る間、チラチラと視線が感じられたが、気にせず歩いてきた。 「もうそろそろかしら。」 「あぁ。次呼ばれるよ。」 2回目の会話もすぐ終わってしまった。 ずっと後ろについて来たラットに視線を送るが、そもそもコチラを見ていないようだった。 そうか、基本召使いは主の目を見てはいけないとか言う決まりがあったかな。 「リア・デ・リドル・アナスタシウス王子と、リア・デ・アデル・カイリ王女様、ご入場です!」 なぜか私だけ様をつけられたが、気にせず前へ進む。 右には貴族、左には庶民の親が座っている保護者席を通り過ぎ、王族専用のイスへ座る。 アナスタシウスのスマートなエスコートのおかげでなんとか乗り切れた。 正直言って緊張で全身震えていた。 まだこの後も生徒代表の言葉があるから安心できるわけじゃ無けど、ちょっと安心。 無事入学式が終わり、初めての授業も終わった。 「お疲れ様でした、カイリ様!」 ラットが走ってこちらへ来る。 「ありがとう。」 一言で済ませ、寮へ帰る支度をする。 ママの時から十数年も経っているから、少し制度が変わった。 まぁ、生徒の意見によってコロコロ校則が変わるのは良い事だよね。 今回私が推薦入学して条件として、ローブと寮について校則改正をしてもらった。 ローブについては、短いケープか長いローブかどっちか選べると言う事と、王族は別寮にすると言うことになった。 ケープに関しては、私自身がデザインした。 「ラット、行きましょう。」 教科書等が入っている学生鞄をラットに預け、教室を出る。 「カイリ!」 私を呼び捨てにしている所を考慮すると、アナスタシウスだろう。 声からも分かる。 「何?」 「一緒に帰ろうよ。同じ寮なんだし。」 態度や言葉遣いはあの頃と変わらないが、スラリと伸びた身長や見た目に、あの頃とは違う感情になった。
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