デビュタント

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「遅れて申し訳ありません。 今日のディナーは政務をしながらでも食べられるように牛のサイコロステーキにいたしました。どうぞお召し上がり下さい。」 ラットの説明などそっちのけで書類に目を通す。 「ありがとう。」 ナーシャが答える。 私とラット以外の二人は驚いたようにしている。 一息つくと、目の前のご飯にかぶりつく。 あぁ、ちゃんと美しい作法で食べているわよ。 「美味しいわね。」 とても綺麗に、そして速く食べ終わった後、その場でまたすぐに書類に目を通す。 次は財務省の書類。 特に変な所は無さそうね。 ん? 王子宮の補修費用として検討されている費用に少し誤差がある。 前に水晶で見た時は窓が割れていた。 だが窓は国産の水晶で検討されている。 誰かがボッタクリしたか。 それか財務省のヤツが間違えたか。 コレは調べておかないと。 誰かが、きっと貴族派のヤツだろう。 そう言うヤツには弱音を握ればすぐに私の味方になる。 たしか王子宮と財務省の管理はリリクレール家が行っていると資料に書いてあった。 財務省の現会長はゼン子爵、そして副会長がバーロン伯爵だ。 両家共あまり仲は良くないが、同じ貴族派である。 そしてリリクレール家の領地民だ。 全く、騎士であるリリクレール家に任せたらたまったもんじゃない。 リリクレール家は皇帝派であるのに領地民には貴族派が多い事はおかしい。 ちゃんと仕事が出来ないなら他の貴族に変わってほしいわ。 「ラット、明日までにゼン子爵とバーロン伯爵の身元を徹底的に調べてちょうだい。 それと国庫の回り方もね。これは1週間以内よ。よろしくね。」 「分かりました、カイリ様。」 私は前に貰ったリリクレール領地の貴族の婚姻関係を示してある資料を出す。 今まで貰った資料はAIと結合した魔法処理で脳内にフォルダリングしてある。 そのフォルダリングした中から一枚の紙を取り出す。 『リリクレール領地婚姻関係図:下級貴族』 伯爵や子爵は下級貴族に分類されるからこれでいいと思うけど。 カイリの思惑通り一番上に彼らの婚姻関係図が書いてあった。 ゼン子爵の長女、ゼン・ラシューラ嬢は30歳以上上のバーロン現伯爵の(めかげ)としてお嫁に行っている。 さらに子爵家とは思えないほどの持参金を渡してまで。 そして伯爵より下である子爵が、財務省の会長になっている。 これは裏でやり取りがあったわね。 「ん?」 バーロン伯爵の家系図には妻が一人と書かれている。 妾であるラシューラは2年前に……亡くなっていた。 ほほう、これは私の好きなお金のやり取りね。 フフフと不敵な笑いをしていると、 「カイリ、ディナーの時ぐらいは休みなよ。」
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