デビュタント

6/7
前へ
/67ページ
次へ
かばんから出て来たのは、仮面だった。 アメジストで出来た、蝶の仮面。 ビビーに差し出しながら、言葉を述べる。 「貴方には2つの選択肢しかない。カイリア王国第17王女として、好きでもない人の所へ嫁に出され一生苦しんで過ごすか、わたくしと共に自由になるか。どうする、カイリア・ビビアン。」 人差し指と中指の二本をたてながら問いかける。 今までとは違い、偉そうな態度を取る私に若干顔をしかめるが、立場をわきまえたようだ。 もちろん、カイリア王国とリリアーナ王国では権力の差がありすぎる。 仮面をビビーに渡し、カッコよく決め台詞を決める。 「1週間。 1週間以内にどちらか決めておけ。」 来てすぐ帰る。 そう、社交界で成功する淑女達は皆、会場に長居はしない。 男性かトップの王族でない限りパーティの最後まで残ることは無いだろう。 そんなこんなを考えながらスカートの裾を持ち上げ、さっさと退散する……。 「わたくし、自由になるわ!」 後ろを振り返りながら、私はクスッと笑った。 「……と言うわけだ。学園へ来てから今まで毎日母親が行ってきた政務と、同じ資料を見てきたが、リリアーナ王国を乗っ取るのは不可能と判断した。」 私は自分の出生をビビーに話すと、感動(?)をして泣いてくれた。 「貴方には『バイオレット』ととして、わたくしの立場を固めてほしいの。」 さらにかばんから一枚の紙を取り出す。 「来年、わたくしが2年生に進級した時。貴方はバイオレットとしてパーティに参加する。それまでの2ヶ月間は、バイオレットになりすます練習の時期。わたくしが直々に教えて差し上げよう。 そしてコレが、わたくしの計画だ。」 紙にはデカデカと『神聖インカ帝国』と書いてあった。 人間界にある高度な建築技術を持った空中帝国、インカ帝国。 インカ帝国は1533年スペイン人のフランシスコ・ピサロに滅ぼされるまでの100年間、栄えていた。 いわば繁栄するだけして滅んだ国、と言うべきか。 ただ、私はそんな事にはならない。 インカ帝国の名前を取った理由は、高度な建築技術があったからだ。 他にも約500年前に生贄として死んだミイラが、まるで数週間前に死んだように状態が良かったりと、が素晴らしいことから名前をつけた。 「ではカイリ様はリリアーナ王国の王太子妃ではなく、インカ帝国の帝王と言うことですか?」 全く話しについていけていなかったセレイが口を挟む。 「そうだ。正しくは、『カイリ・ド・インカ帝王』よ。」 そう名乗ると、3人は驚いたように私を見つめる。 「「「名前を先に付けるのですか!?」」」
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加