デビュタント

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ビビーの驚きもサラリと受け流す。 「わたくしはリリアーナ王国を滅ぼしたいのよ。なぜ王国と同じ制度を設けなければならぬ。」 蔑むような目で3人を見る。 魔法界で名前が先に来るということは、自身が労働者階級である事を表す。 逆に言えば、王族と貴族、そして大商人など金持ちは名前が後でくると言う事だ。 「申し訳ありません、カイリ女帝陛下。お許しください。」 なめらかな動作でお辞儀をする。 少々苛立ちもあったが、彼女のお辞儀を見て気が変わった。 「次からはもう少し口を慎め。」 「承知いたしましたわ。」 ふぅ、と一息つくと、本題に戻る。 「1ヶ月後。バイオレットの予行練習としてゼン子爵邸へ行ってもらう。そこでは2ヶ月後に行われる、カイリア王国でのパーティの招待状を貰ってきなさい。そこでセレイ。あなたの番よ。 セレイ直々にバイオレットを紹介すると言えば、子爵は断れない。セレイは連れて行くだけでよい。ビビーについてはまた明日教えるわ。 では政務が終わってないので失礼するわ。ごきげんよう。」 「ご、ごきげん麗しゅうございます。カイリ女帝陛下。」 まるで台風一過だ。 まぁ事実、明日ビビーに教える事がまだ細かに決まっていない。 さぁ、わたくしの完全犯罪の始まりよ! 翌日。 S組の特権である授業の無断欠席を使い、私とビビーは体育塔にあるダンスホールに来ていた。 「貴方にはまず、1ヵ月後のゼン子爵邸訪問で、ゼン子爵を味方につけること。ゼン子爵は賢いから身分を悟られてはいけない。だから貴方には男性の動きをしてもらうわ。」 「男性の…動き?」 明らかに疑問を隠しきれていない様子のビビー。 セレイに送ってもらうと言う事で、今日はルーに作らせた唐服を着ている。 裾が広がっており淡い桜色がよく似合っていた。 「まずはお辞儀から。貴方が今その服を着ている理由は?」 「えっ……セっセレイに紹介してもらう為でしょうか。」 カイリは満足そうに頷き、ニコリと笑う。 「そう。当日は違う服を着る予定だが、靴は今と同じものを使う。 本題に戻ろう。では、セレイの故郷のラカンスター王国のお辞儀を教えよう。その服は漢服と言い、挨拶する時は『揖礼(ゆうれい)』をするの。女性は右手を、左手の上に重ねるのが基本。わたくしがお手本を見せるわ。」 私は長い説明を終え、ビビーの目を揖礼した。 角度は斜め30度、頭よりも前に組んだ手を出し手を服の袖で隠す。 「本来、相手の目を見てはいけないけど、バイオレットは身分を気にしない、という設定だから目を見てやってみなさい。」 私も正直初めての揖礼だったから出来るかどうか心配したが、案外かんたんなものだ。 「お初にお目にかかります。セレイ王子のご紹介をお受けいたしましたバ……「ああん、もうダメね。何をかしこまっている。」 はっはい……気をつけます。」 何が駄目なのかと眉にシワを寄せるビビーだったが、これくらいしないとなりきれないだろう。 「さぁ、もう一度。」 そしてビビーと私の猛特訓が始まった。
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