3人が本棚に入れています
本棚に追加
ビビーの驚きもサラリと受け流す。
「わたくしはリリアーナ王国を滅ぼしたいのよ。なぜ王国と同じ制度を設けなければならぬ。」
蔑むような目で3人を見る。
魔法界で名前が先に来るということは、自身が労働者階級である事を表す。
逆に言えば、王族と貴族、そして大商人など金持ちは名前が後でくると言う事だ。
「申し訳ありません、カイリ女帝陛下。お許しください。」
なめらかな動作でお辞儀をする。
少々苛立ちもあったが、彼女のお辞儀を見て気が変わった。
「次からはもう少し口を慎め。」
「承知いたしましたわ。」
ふぅ、と一息つくと、本題に戻る。
「1ヶ月後。バイオレットの予行練習としてゼン子爵邸へ行ってもらう。そこでは2ヶ月後に行われる、カイリア王国でのパーティの招待状を貰ってきなさい。そこでセレイ。あなたの番よ。
セレイ直々にバイオレットを紹介すると言えば、子爵は断れない。セレイは連れて行くだけでよい。ビビーについてはまた明日教えるわ。
では政務が終わってないので失礼するわ。ごきげんよう。」
「ご、ごきげん麗しゅうございます。カイリ女帝陛下。」
まるで台風一過だ。
まぁ事実、明日ビビーに教える事がまだ細かに決まっていない。
さぁ、わたくしの完全犯罪の始まりよ!
翌日。
S組の特権である授業の無断欠席を使い、私とビビーは体育塔にあるダンスホールに来ていた。
「貴方にはまず、1ヵ月後のゼン子爵邸訪問で、ゼン子爵を味方につけること。ゼン子爵は賢いから身分を悟られてはいけない。だから貴方には男性の動きをしてもらうわ。」
「男性の…動き?」
明らかに疑問を隠しきれていない様子のビビー。
セレイに送ってもらうと言う事で、今日はルーに作らせた唐服を着ている。
裾が広がっており淡い桜色がよく似合っていた。
「まずはお辞儀から。貴方が今その服を着ている理由は?」
「えっ……セっセレイに紹介してもらう為でしょうか。」
カイリは満足そうに頷き、ニコリと笑う。
「そう。当日は違う服を着る予定だが、靴は今と同じものを使う。
本題に戻ろう。では、セレイの故郷のラカンスター王国のお辞儀を教えよう。その服は漢服と言い、挨拶する時は『揖礼』をするの。女性は右手を、左手の上に重ねるのが基本。わたくしがお手本を見せるわ。」
私は長い説明を終え、ビビーの目を見ないように揖礼した。
角度は斜め30度、頭よりも前に組んだ手を出し手を服の袖で隠す。
「本来、相手の目を見てはいけないけど、バイオレットは身分を気にしない、という設定だからわざと目を見てやってみなさい。」
私も正直初めての揖礼だったから出来るかどうか心配したが、案外かんたんなものだ。
「お初にお目にかかります。セレイ王子のご紹介をお受けいたしましたバ……「ああん、もうダメね。何をかしこまっている。」
はっはい……気をつけます。」
何が駄目なのかと眉にシワを寄せるビビーだったが、これくらいしないとなりきれないだろう。
「さぁ、もう一度。」
そしてビビーと私の猛特訓が始まった。
最初のコメントを投稿しよう!