復讐開始

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続々と後ろからA組が追いかけてくる。 よし、もうそろそろスピードをあげようか。 もう出発してから6・7時間経っていた。 「待てッ!」 残りあと500メートルぐらいになった所で、私はビビーに向かって叫んだ。 「どうしたのですか?」 また急ブレーキをかけたものだから後ろにいたビビーは前に来ている。 「あれを見てみよ。」 私が指を指した先にある魔法岳には、笠雲のような雲が二重にかかっていた。 「あら、珍しいこと。とってもうつくし…「あれはにかい笠だ。遠くから見ると止まっているように見えるのだが、近づいてみると物凄い風が舞っている。それに2つ重なっているということは、そろそろ風雨が来るだろう。あそこの子近くは私でも危険だ。さて、どうするか。」……。」 今すぐ皆を回避させなければ。 私は後ろを振り返り、スピード競争をしているA組達やその他の1年生徒全員に信号を送る。 『魔法岳頂上、にかい笠が発生中。周りには強風が予想され、もうそろそろ風雨が予測される。近くを通るような危険な真似はしず、最低でも半径1キロ以上離れてUターンするように。以上。』 私の魔力ならこの天気も変えることなどお安い御用なのだが、皆の練習にならない。 本来ならばこんな事はしないのだが、時期皇帝として民を思いやる心も必要だ。 すると後ろから同じように『了解です!』『ありがとうございます!』などと信号が送られてきた。 私はそれを確認したあと、ビビーに向き直る。 「さぁ、魔法岳をUターンしたら全力で学園まで飛んでゆくぞ!」 活気のある私の顔を見て、ビビーも楽しそうに笑った。 「はいッ!」 そして前を向き直ると、1年生全員に対してこっそりシールドを張った。 魔力が強すぎる人あるあるの1つ。 周りを気にしすぎて魔法をたくさん使い、更に魔力が上がってしまう説。 そして魔法岳を曲がり、ビビーと横に並ぶ。 「位置について……。ヨーイ、ドンッ!!」 なるべきビビーに有利なように、ビビーが先に行く。 「ヨーイ、ドンッ!」 もう私の位置からビビーが点に見えるようになるぐらい離れてから、私がスタートする。 私はマッハ10で飛行。 マッハ10だとさっきよりも少し速いぐらい。 簡単に言えば、東京から福岡まで五分で着くと言えば分かりやすいだろうか。 まだ魔法岳に向かっているグループが、何事だとこちらを振り返るが一瞬の事なので首を傾げている。 まるで早送りをしている感じだ。 「ビビー!! 遅いぞ!」 競争開始1時間で早くも片道3分の1を通り越し、対にビビーをも追い抜かそうとしている。 その速さにぎょっとしたビビーの顔を見て、大声で笑う。 しかしあっと言う間にビビーを通り過ぎ、片道の中間地点も通り越した。 するとヨロヨロと不安定な飛行をさせながらナーシャと、安定なと言うかナーシャを引っ張っているセレイが飛んでいるのを見つけた。 やはり人間の血が入っていては飛ぶのが難しいか。 二人をあっという間に通り越し(強風に煽られ二人は転倒。)、叫んだ。 「この世界、サイッコーーーーー!!!! きゃゃゃゃぁぁぁぁ!!!」 あと数キロで学園だ。 もうこの時間が終わってしまうのが悲しい。 名残惜しさからか、ちらりと後ろを振り返るが、誰もいない。 もしかしてあれがビビーかなぁ……?ぐらい遠くにビビーがいるだけで、本当に一人だ。 あぁ、もう学園のてっぺんに来てしまった。 私は螺旋階段を降りるようにぐるぐるゆっくり降りていたが、途中で辞めた。 もう一気に降りて行っちゃおう。 着陸などどうでもいい。 全身で風を受けたい。 私は箒の上に立ち、落ちた。 前世の事が蘇る。 前と同じで不思議と怖いとは思わなかった。 箒も重力に逆らわずに落ちてくる。 髪の毛がバサつき、まるで風に包まれているみたいだ。 (キケン、キケン。後500メートルで地面。残り時間30秒。) 不意に頭の中危険信号が流れる。 あぁ、いつの日か危険を知らせてくれる魔法を自身にかけたっけ。 魔法で箒をおびき寄せ右手で掴む。 (残り15秒。…10秒。カウントダウンを開始します。6、5、4、3、2、1、0。) カウントダウンが終了した。 もちろん私は生きている。 カウントダウンが始まった瞬間に箒に捕まり、箒の浮遊力を使って降りただけだ。 まぁそれが一番難しいんだが。 広場で待っていた先生が興奮した様子で駆け寄ってくる。 「カイリさん! 今まで最高記録の9時間57分23秒です!! これは凄い!!」 その2時間後ビビーが帰ってきた。 その後から続々と生徒達が汗だくになって帰宅し、もう夜遅かったので寮に帰っていった。 中々来なかったのは例年通りB組下位のグループとC組だった。 そして夜中3時半を回った頃、ようやくナーシャとセレイが帰ってきた。 先生曰く、ナーシャがドチャクソ飛行が苦手でセレイは付き合わされていたとの事。 よくそれでA組に入られるな。 ナーシャ達が帰ってきた日の朝、私は歴代最高記録として盾に名前が刻まれた。 〈おまけページ終わり〉
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