復讐開始

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カイリア王国は土地が小さい。 しかし夫妻の弱みを握ることができたから、リナリアーナ家の土地は手に入ったも同然。 いい仕事をしてくれた。 リナリアーナ領地はナリル王国の隣だから気候も温暖で、魔法界一大きな鉱山もある。 ……そうか、ナリル王国。 あそこには国土の3分の1を占める大きな砂漠があったな。 あそこでは遊牧民が少数いるが、リナリアーナ領地付近はオアシスすらない地域もあるらしい。 確か、対処できない砂漠問題について悩んでいると聞いたことがある。 よし、次はここへ行かせよう。 暑いが、少し我慢をしてもらうか。 「あっ、暑すぎますよ! こんな厚着では!」 バイオレットが苦渋をこぼす。 「仕方がないであろう。 ……全く、今回だけだぞ。」 右手の人差し指で上を指し、クルクルッと回す。 指から霧のような水色の煙が現れ、バイオレットのあたりを包み込む。 「まぁ! 体温維持魔法ですか! こんな上級魔法を使えるなんてさすが陛下!!」 パチパチと手を叩いて褒める。 今日の衣装は、青と紫のクリノリンスタンス。 一応暑さ対策として下着を減らし、白いシャツも風通しの良いシフォン型にしたのだが、やはり暑いらしい。 黒の手袋にピンヒール、コルセットとアクセサリーは黒で統一した。 だから余計に暑いのかもな。 バイオレットが青の帽子かぶると、馬車に乗り込んだ。 「しっかり領地、頂戴してまいりますね!」 当たり前だろう、と思いながらも微笑んでコクリと頷く。 対価は、なし。 これで、どう交渉してくるかが楽しみだ。 「ごきげん麗しゅうございます、国王陛下。はじめまして。わたくし、この世の情報屋、バイオレットと申します。」 リリアーナ王国式カーテシー。 左手で胸を抑え、右手が見えないようにスカートを持ち上げるお辞儀の仕方。 ナリル王国の国王は色黒で肩幅の広い中年の人、という感じだ。 髪は黒色。 典型的なナリル先住民の風貌をしている。 名前は、『ナリル・アンドリュー』国王陛下。 大丈夫。 カイリ様に教えてもらった通りにすれば大丈夫。 今回も成功するはずよ。 「やぁ、バイオレット。君の噂は小耳に挟んでいるよ。今回はどんなことを余に話しれくれるかな?」 性格は穏やか。 そして今は機嫌もよく、私の話も受け入れてくれそう。 そうよ、私もこのまま大きな態度で過ごすのよ。 「陛下のお時間も取らせて頂いていますので、単刀直入に言わせていただきます。……わたくし、いえ。カイリ陛下にナリル王国の土地を頂きたく存じ上げます。」
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