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先程の男児たちとは違い、彼は貴族の服を着ている。
まぁ今で言う、皇子系ロリってやつかな。
あ、ちなみに私はクラロリね。
狼のような銀の髪と瞳が特徴的なその男の子は、どんどん私に近付いてくる。
「僕は王宮にある全ての宮に、誰が住んでいるか知っているつもりだった。
……でもまさかこんなに可愛らしいお姫様がいらっしゃるとは。
僕の名前はアナスタシウス。以後お見知りおきを。貴方はどこのご出身で?」
いつの間にか右手にキスをされていた私は急いで杖を取り出して手を振り払う。
背丈と同じくらいの長さの杖を見て、アナスタシウスは目を見張る。
「さっきも言ったけど個々は危険よ。貴方のような子供が来る場所ではないわ。」
私はアナスタシウスに背を向けて来た道を戻る。
「ねぇ! 名前だけでも教えて!」
しつこい彼に根負けした私はため息をつきながら答える。
「カイリよ。」
短く答えると、私はもう一度歩き出す。
「明日も来ていい?」
アナスタシウスの声が響く。
全く貴族の癖してしつこい奴ね。
私は鼻で笑うと振り返っていった。
「好きにすれば。」
やっと帰れる。
と私は風と共に消えた。
僕はカイリの居なくなった場所をボウッと見つめる。
この国では、昔から魔法界との交流がよくあった。
今でも、特にリリアーナ王国からは貴重な宝石などを輸入している。
しかし魔法界があるのを知っているのは、王族と王宮内で働く重臣達だけ。
僕も先生から口伝えで魔法界についてを教えてもらった事があるが、見たことが無いから空想上のものだと思っていた。
しかし今、それを覆すことが起きてしまった。
変身していた姿も美しかったけど、元の姿の方が美しい。
透き通るような水色と、血のように真っ赤な赤の髪。
どんな宝石よりもキラキラと輝く金の瞳。
可愛らしい青と緑のパニエスカートがとても良く似合っていた。
(また、会いたいな。)
僕はニコリと笑うと、その場を去った。
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