リリアーナ・カイリ

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「なぜ個々に来れたの?」 後ろに立っているアナスタシウスに声をかける。 表情は見えないが、きっと笑っているのだろう。 雰囲気で伝わってくる。 「勿論、貴方に会いに来たのですよ。」 私は振り返った。 そして、大きくため息をつく。 「貴方に質問をした私が馬鹿だったわ。 ……もういいわ。好きにして。」 私はアナスタシウスに向かって杖を振る。 びっくりしたのか、アナスタシウスは腕で顔を覆った。 杖からでた金の光の粉は、彼を取り巻きそして、消えた。 「ぼっ、僕に何をしたの? ……もしかして魔法が使えるとか!?」 一人でワーイワーイとはしゃぐ彼を見て、少し笑みが漏れる。 「呪いの魔法よ。」 冗談交じりに言ったが、本気にしてしまったらしい。 急に焦りだした彼はどうしよう、どうしようとあたりを歩き回る。 全く、感情の起伏が激しいのね。 私は久しぶりに笑った事にひとり驚く。 2年後。 あの日からどこへ行っても、アナスタシウスと会うようになった。 「カイリ!」 いつの間にか呼び捨てで呼ばれていたが、今になってはもう慣れたものだ。 私は何時もどおり「奇遇ね。」と返事をする。 口ではあまり会いたくないとは言っているが、実際会わなかったら会わなかったで違和感がある。 「そうだ。 今日私の誕生日なの。まぁ、誕生日って言っても祝われる程じゃないけどね。 ……母国にいればもっと盛大に行われるけどね。」 最後の方はボソボソと喋ったから、アナスタシウスには聞こえなかったと思う。 彼は子供らしく「じゃあ明日、プレゼントを持ってくるね!!」などとはしゃいでいる。 ん? プレゼント? 「いやいや、そんな物いらないわよ。ただ言ってみただけよ。」 「でも誕生日はお祝いされるものでしょう? 楽しみにしててね! じゃあ今日はもう帰るね、バイバイ!!」 会ってすぐなのに、彼は走り去っていった。 なんとまぁ。 台風一過ね。
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