2人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
息している
坂道の多いこの町のど真ん中に私の通っている高校があった。
学校までは駅を出てすぐ目の前に見える傾斜のある坂道を登っていく。
五階建ての本校舎の屋上へと上がる階段の踊り場の窓からの景色を見ていると、自分が水槽の中にいるような不思議な感覚になる。
私は小さな小さな魚。
この水槽にはそんな小さな魚がたくさんいて私もそんな中の一匹にすぎない。
ぷくぷくと空気の泡が下から上がってきて、その泡からわたしたちは息をすることができる。
時々息苦しくおぼれそうになりながらも、水槽の水面に顔を出すように屋上に出ては、外の世界はどんなだろうかと思いを巡らせながら深呼吸。
でも、もしかしたら外側の世界が逆に水槽の中で、外側の人たちから見たら、この窓の中にいるわたしは外側の世界にみえているのかもしれない。
ここでは、ここが私が息ができる唯一の場所。
ここまで上がってくる人間は少ないから。
時々友達が呼びに来てくれるが。
いつも思う。この水槽の中にいれるのは期限付き。
卒業したら私も水槽の外側の世界に行かなければならない。
そう遠くないうちに。
あっちに行ったらはたしてやっていけるのだろうか。
今もすでにいっぱいいっぱいなのに外側の世界に出たらどうなるのだろうか。
ここのような居心地の良い場所をみつけることができるのだろうか。
ここもまたチャイムと同時に教室に戻らなければならないある意味期限付きの場所ではあるのだが…。
明日も今日と同じようにまたここに来るであろう。
そして屋上に出て水面に顔を出すように深呼吸するであろう。
最初のコメントを投稿しよう!