好きって…

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好きって…

私には好きって感情がよくわからない。 何をもって好きというのだろうか。 好きにも色々な種類がある。 友達の好き。 親子の好き。 兄弟の好き。 それから恋。 飼っているペットの好き。 おじいちゃんやおばあちゃんや親戚の好き。 可愛いキャラクターや好きなアニメの好き。 などいろいろ。 私にはどれを取って好きなのかよくわからない。 好きなものはもちろんいろいろある。 食べ物の好き。 嫌いなものもたくさんある。 でも、中学になり、周りで恋という好きという気持ちが流行りだした。 早い子では、誰かと付き合っていたり、好きな子がいたりしている。 私の友達もお付き合いをしてる人がいる。 でも、はっきり言って私はそんな気持ちがわからない興味もない。 友達は、早くあんたも恋をしなさい。 好きな人を作りなさいと言う。 そんなもんなのかなと私は思う。 だってだってもうすぐ受験だよ。 毎日毎日勉強しているのにそんな暇ないよ。 引退前で部活だって忙しいし。 そんなある日、突然、私のことを好きという男の子が現れた。 膨大な宿題に追われて机に向かっていると、階段の下から私を呼ぶ母の声が聞こえた。 「いく!電話よ電話!」 私は、膨大な宿題に頭を抱えてかきむしっていたところだったので立ち上がると誰だろうと思いながら階段降りていった。 母はニヤニヤしている。 「男の子よ」 私は、思い当たる男の子がいない。 だって仲良くしてくれる子たちはみんな私の LINE を知っているし、自宅にかけてくる子なんて思い当たらない。 不審に思いながら電話に出た。 「もしもし」 誰だろ。 「もしもし俺」 「誰?」 「俺だよ俺!隣のクラスの阿部。中間前で忙しいのに悪いな」 「ああ!阿部?どうしたの?なんか用?」 同じ保健委員で隣のクラスの阿部だった。 阿部はバスケ部のエースでもある。 「いやー、あのさぁ、えっと、お前さあ、付き合ってる奴とかいるの?」 「は?どうしたの急に。私らそんなこと話す仲だったっけ?」 私は、思っても意味ない言葉にドキッとした。 「いやー、好きなやつでもいないのかなーとか思って」 「いるわけないでしょ!あはは興味もないよ!それがどうした?」 「ならさあ…俺と付き合わない?」 「…」 意味が分からない。 何が起こったんだ? 今の私の頭の中で、ぐるぐるぐるぐる同じ言葉が回る。 阿部は、私に付き合わないか?と言った。 そもそも付き合うって何? 私が無言でいると、阿部が切りだした。 「そりゃそうだよな。そうなるよなあ。もう1回言う。よーく聞け。俺はお前が好きなんだ。」 阿部は、照れくさそうにそう言った。 「あのさぁ、ごめん。私そういうの分からないんだよね。クラスでみんな誰々が好きーとかさ言ってるけど、その好きという気持ちが私はよくわからないんだ。好きなものは、たくさんあるんだけどね。友達のことも好きだし、親のことも好きだし、おじいちゃんおばあちゃんのことも好きだし、でも、男の子のことを好きっていう気持ちがよくわからないの。せっかく言ってくれたのにごめん。」 「ハハハ。だと思った。こっちこそごめん。だよなー。でも、俺本気だから。少し考えてくれないか?返事は急がないから。」 「うん。分かった。でも、期待はしないでね。」 「おう!わかった。じゃな。」 「うん。じゃあね。」 私は、そう言うと受話器を置いた。 母が何か言いたそうにニヤニヤしている。 「あんたもやるね!男の子に告られるなんてさ!で、どうするの?」 「盗み聞き?趣味悪!別にどうもしないよ。興味ないもん。」 私は、母にそう言うと居間を出て、また自分の部屋に戻った。 今起きたことがそうなのか。 告白されるということはこういうことなのか。 では、どう答えたらいいのだろう。 「うわああああああ!!阿部のバカ!!!もう!勉強どころじゃなくなっちゃったじゃない!どうしてくれんのよ!」 わたしは自分の机に突っ伏して、さっきとは違う意味でまた頭をかきむしった。
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