アルアメノヒ

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 こんなに行動を起こしたのは何年ぶりだろうか。  大学のとき、尊敬していた教授に研究チームに入れてもらえるよう走り回った時以来か?  雨が降り続く中、私は株式会社姫凛グループの本社の前に立っていた。  名刺の裏に書かれていた福さんの携帯番号に電話をすると、あの穏やかな声で 『僕の渡した名刺を本社の受付に見せてくれば面接会場に案内するよ。』  ―――そして、決断してくれてありがとう。  彼はそう言っていた。  確かに彼はこの会社の御曹司に間違いなさそうだった。  ホームページに掲載された姫凛の社長の顔を見て分かった。  彼によく似た優しそうな顔をした父親だった。
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