それが貴方と違うから

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 その日は朝からどんよりと重い鈍色(にびいろ)の雲が空を(おお)っていた。  愛車に乗って、いつも通いなれた道を走りながら、ふとルームミラー越しに後方を見遣った私はドキッとした。 (エスティマ……)  それも最新型のものではなく、何世代か前の型のもの。  私はかつて、それに乗る人と付き合っていたことがある。  その人は、ある日突然……本当に突然……何も言わずに私の前から姿を消してしまった。自ら命を断つという方法で。  余りに突然の別れだったからだろうか。  今でも私の中に、彼の死を認識できずにいる自分がいる。  頭では分かっているけれど、ふとしたときに心が理解していないのだ、と痛感させられる。  そう。今みたいに彼が乗っていた車と同じものを見たときなんかに。  勿論、後ろにいる車の運転手が彼でないことぐらい、そうして恐らくその車が彼が乗っていたものではないことも……理解しているつもりだ。  それでもルームミラーに映る車体が気になって仕方がなくなる。
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