第2章:雨音

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「新兵衛、如何(いかが)した!?」 宗助の問いより早かったか遅かったか 新兵衛は宗助の胸元に顔を埋める様にして 倒れ込んだ。 咄嗟(とっさ)に新兵衛の左後ろの脇腹に(まわ)した 宗助の左手には湿り気のあるものが粘りつく。 (銃創(じゅうそう)じゃ!…新兵衛はやはり 儂を助けた時に撃たれたんじゃ!) 「止血じゃ…早くしねぇと死んじまうぞ」 左手に粘りついた赤黒い血を(かび)た床に 擦り付けると宗助は手前の(はかま)をその左手で(つか)み 刀傷だらけの腕から血が吹き出る程に(りき)んだ。 引き千切り包帯代わりにする腹積もりだったが 新兵衛が右手で宗助の左腕間接辺りを握り締め 宗助の顔を見上げながら首を横に振る。 宗助には新兵衛が言いたい事が分かっていた 弾丸は新兵衛の左脇腹を貫通している。 紺色の小袖(こそで)の上に着込んだ甲冑(かっちゅう)の破片がまるで散弾銃の様に新兵衛の体内に飛散しており 最早手の施し様が無い事は明らかである。 宗助の刀傷とは比較出来ぬ程の致命傷であった
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