6人が本棚に入れています
本棚に追加
「なぁ…まだ目は見えるか?新兵衛」
「あぁ…まだ…うっすらとなぁ…」
剣客として鋭い眼光を帯びていた新兵衛の
瞳は次第に焦点が合わなくなっている事に
宗助は気付いていた。
「儂は…ずっと後悔していた…
宗助…おめぇを村から連れ出したのは儂だ…
ずっと百姓をしていれば
おめぇはこんな危ねぇ目に合わずに
済んだろうに…
村を出たあの日から儂の心ん中は
ずっと雨降りだ…晴れた事がねぇ…」
全身汗をかいていた新兵衛の身体が
すっかり渇き、身体の温もりが失われ
氷の様に冷たくになるのを感じながら
宗助はただ頷き新兵衛の話に耳を傾けた。
最初のコメントを投稿しよう!