超性能、異世界魔法陣!

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超性能、異世界魔法陣!

 高校生としての二度目の春。  一年に引き続き、二年の新しいクラスでも絶賛ぼっち中の俺は、いわゆる平凡なオタク高校生である。  名前は長代(ながしろ)(まもる)。  趣味といえばアニメ、漫画、映画にフィギュアとだいたいのオタク趣味は網羅しているが、創作側の立場ではなく消費する側のオタクだ。  最近のマイブームは異世界転生、転移系の作品で、小説に漫画にと読み漁っている。生粋のシティボーイである自分は異世界に行くなんて考えられないが、読み手として楽しむ分には最高のコンテンツである。テンプレだからこその安心感と、テンプレの中に光る作者のオリジナリティがとても面白いのだ。  とはいえ諸手を挙げて全肯定というわけでもなく、納得できない部分もある。  例えば、異世界転移のきっかけとなる魔法陣。足元に浮かび上がる転移魔法陣に、主人公たちは焦ったり驚いたりしても逃げることなく転移させられてしまう。そして、元の世界に戻りたいと嘆くのだ。  そんなテンプレを目にする度、俺は「逃げればいいじゃない」とか思ってしまうのだ。設置式魔法陣なんてちょっと横に動けば逃げれるだろうし、仮に教室をカバーするような大きさでも二秒あれば窓から飛び出せる。少なくとも俺ならそうする。  そう思っていた時期が俺にもありました。 「どおっせええええい!」  かけ声一番、机の上に駆け上がりながら必死に跳躍する。  幸い昼飯時でほとんどのクラスメイトは食堂に移動しており、教室には弁当組がわずかに残っているだけだ。持ち主不在をいいことに、俺は机から机と次々に飛んで逃げていた。 「ちくしょう! リアル魔法陣とかふざけんなよ!」  毒づく俺の後ろからは、地面を這って輝く魔法陣が追いかけてきている。 「追尾式とか冗談じゃないぞ! 普通設置式だろ!? そんなの卑怯だ!! 」  追尾式魔法陣などというテンプレキラーな反則技に追い立てられる俺の姿を、クラスメイトたちはぽかんと口を開けて見ている。どうせなら動こうとしない彼らを狙えばいいのに、魔法陣は完全に俺をロックオンしていた。  明らかに自分が狙われている。  これはいわゆるあれだ。  異世界転移の主人公は俺で決定。  まったく喜ばしくない。 「絶対に嫌だ! 魔王退治とか無理! 絶対にむりむりむーりー!」  消費系オタクの俺には体力など皆無。ついでにコミュ力も皆無。そんな人間が異世界で仲間たちとパーティー組んで魔王退治とか絶対に無理がある。  だがそんな願いもむなしく、狭い教室では逃げることもままならず、行き止まりの黒板が迫っていた。後ろには魔法陣、前には黒板、退路は右の戸口か左の窓か。 「勝機はどっちだ!?」  素早く右を向いて障害物を確認、戸口にはヤンキーとギャルがたむろしていた。即決、右は無理。オタクが関わりたくない人種トップランカーたちの群れに飛びこむことはできない。  我、進軍は不可能と判断す!  戦略的撤退を敢行すべし!  俺は即座に左に飛んだ。 「あっ」  後悔先に立たずというけれど、本当にこの時ほどその言葉を痛感したことはない。生理反応だけで左の窓に向かって飛んだのだが、そこには音無(おとなし)柑奈(かんな)さんが優雅に佇んでいらっしゃったのだ。回避は不可能、我接触す。 「よ、よけてぇぇぇぇぇぇっ!」 「むり」 「冷静!?」  意外と冷静な音無さんを巻きこんで、俺たちは盛大に地面を転がった。音無さんを庇って背中をしたたかに打ったおかげで一瞬呼吸ができず、激しい痛みにのたうった。 「いったぁ……って、やばい! 魔法陣が……っ!」  はっと我に返るが時すでに遅し。俺と音無さんの足元には、魔法陣が小憎らしく燦然(さんぜん)(きら)めいていた。 「ちっくしょう……!」  そして、俺と音無さんは光の爆発に飲みこまれた。
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