「君は私の強い味方」

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** 「美波〜!」 仕事が終わり、会社のオフィスから出て帰宅する途中、突然後ろから聞こえた声に呼び止められた。 誰だろうと振り返ると、そこにいたのは隣接するオフィスに勤めている、親友の河瀬リサだった。 「え・・・・? リサっ!?」 「美波久しぶり〜!元気?」 隣りのオフィスに勤めているのにお互いなかなか会う機会がなく、リサと会ったのは実に2ヶ月ぶりだったが、彼女は相変わらず、誰もが振り返るほどの華やかな美貌の持ち主だった。 「美波、夜ご飯まだでしょ? 久しぶりだし、どっか食べに行かない?」 家に帰ってまだ仕事をする予定だったが、せっかくなので一緒に食事をすることにした。 * リサがおすすめと言っていたお店は、とても雰囲気が良くて料理も美味しく、女子には人気のお店だった。 「ここすごいオシャレなお店だね〜。なんか、久しぶりに女子の気分を味わえた気がするわ・・・・」 「何よ女子の気分って・・・・てゆーか美波、あんたしばらく会わないうちにどーしちゃったのよ? さっき会社の前で声かけた時、美波があまりにも地味でダサい格好してたから、一瞬別人に声かけちゃったかと思ったわよ」 「地味でダサいって・・・・そんなはっきり言わなくても」 「しかも、肌荒れかなりヤバくなってるじゃない。もしかして眼鏡かけてるのって、それを隠すため?」 さすが美容メーカーで働く親友である。観察眼が鋭い。 「・・・・さすがリサ。バレたか。松村には隠し通せたのにー・・・・」 チッとふてくされる私。ふと会社での数時間前の出来事を思い出す。その瞬間、余計なことまで思い出してしまった。 「松村? 松村ってあのハイスペックボーイのこと? あら美波、顔赤いわよ〜? 何があったか白状しなさいよ!」 リサの瞳がいきなりキラキラと輝き出した。こういう顔をした時のリサには冗談は通じない。私は諦めて会社でのことを白状することにした。 「いや、別に何かあったわけじゃないんだけどさー、会議室に一人で残ってた時に松村が携帯忘れたって入って来て、思いっきりため息ついて机にダイブしてるの見られちゃって・・・・油断してたわ」 「まあ、美波は昔っから負けたくない相手の前では、絶対に弱味を見せないタイプだもんね。それを松村に見られたと。でもそうじゃないでしょ? 」 「・・・・まあ、その後いろいろありましてー・・・・」 私は松村とのやり取りをひと通りリサに話した。そして、 「・・・・えっ!? あの松村があんたに、眼鏡をしてない方が好きだって言われたの!? それ完全に松村が美波のこと意識してるってことじゃない!!」 「ちょっ、リサ声が大きいって・・・・!」 私はあわてて今にも立ち上がりそうな勢いのリサを押し留めた。 「ちょっと〜何よその面白い話〜! それで、美波はどうなのよ? 」 「どうって・・・・私は松村のこと、そんな風に意識したことはないかな。それに好きだって言われたのも、恋愛対象とかじゃなくて、たぶんあいつにとっては社交辞令みたいなものだと思うし・・・・」 だってあの時、松村に何て言ったのかもう一度聞いたら「別に」て返事が返って来たもの。 「美波、それ本当に社交辞令だって思ってる? じゃあさ、ひとつ試してみない?」 「試すって何を・・・・?」 いきなり何を言いだすのだろうと思っていると、突然目の前に化粧品がずらりと置かれた。 「これね、うちの会社の新商品なんだけど、きっと美波の肌にすごく合うと思うの。もともと美波は彫りが深い顔立ちしてるから、肌荒れが原因で眼鏡で顔を隠すなんて私がイヤなの! だからもっときれいになった美波を見て、松村が何て言うか本音を探ってみない?」 リサの提案に少々面食らったが、再び瞳が輝き出したリサを止めることは不可能だと諦めた。
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