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会社に到着してからすぐ、ちょうどのタイミングでエレベーターが開いていた。その時、先に乗り込んでいた先客、松村と目が合った。彼は私に気づいたようで、一瞬目を大きく見開いた。
「おはよう、松村くん」
エレベーターの中は松村と私、2人だけしか乗っていない。何となく、緊張してしまう。
「・・・・おはよう。今日は何か、雰囲気が違うな?」
「そう? ちょっと、久し振りにイメチェンしてみたんだ」
「最近、いや前より綺麗になったな?」
松村は私に笑顔を向けながらそう褒めた。
「・・・・ありがとう」
そのどストレートな言葉に少し照れたが、心の中で私は「よしっ!」とガッツポーズを決めた。
「もしかして美波、彼氏ができたか・・・・?」
松村の意外な言葉にきょとんとしたが、私はそんな松村にちょっと意地悪してみたくなった。
「・・・・さあ? どうかしら?」
私は意味深に微笑んで見せた。すると、松村がわずかに動揺しているのがわかった。
「え? 何で松村がそんなに動揺してんのよ?」何事もスマートにそつなくこなす、あの松村の反応に内心驚いた。
「・・・・本気なら、妬ける」
松村は横を向きながら、小さく呟いた。私の耳にはっきり聞こえたけど、私は気づかないふり。
いるはずのない彼氏に嫉妬するなんて、少しは自惚れてもいいかな? そんなことを考えていたら、目的地に到着した。
「それじゃ、お先に」
「・・・・ああ」
私は先にエレベーターを降りて左に向かう。松村は同じフロアの右へ。
「彼氏ね・・・・まああえて言うなら、私に自信と勇気を取り戻してくれた、コスメくんかな? 君は私の強い味方だよ!」
そう呟いてから、私は自分のオフィスへと向かった。
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