☆雨の日の天然すっぴんガール

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☆雨の日の天然すっぴんガール

 強い風に揺れる電線に止まっている(カラス)は、五線紙に踊る三連音符のお玉杓子(たまじゃくし)のようだ。故郷のように大合唱の(かえる)の鳴き声はしない。その代わり、走る電車の轟音が耳を(つんざ)いた。──忍び寄る夜の気配に胸がドキドキする。  吹き抜けた雨を含む風が鼓膜で暴れ回り、小さな頭には大きいフードが肩に落ちると、二つのお団子にして襟足(えりあし)で流した長い髪が、すーっと真横に引っ張られて優美に流れる。手作りワンピースのボーダーが()を描いた。 「ちょっとガーリーって敷居が高いものね。目指すは抵抗のない爽やかスポーティー!」  化粧っ気のない真ん丸な童顔のすっぴん。夢見がちな天然ガールは夕空を仰いで呟く。
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