37人が本棚に入れています
本棚に追加
ノアは城の武器庫の鎧建てに鎧を置くと、ふぅ、と息をついた。
「さて、鎧をきれいにしなきゃ」
ノアは武器庫の隅に置いてある使用人用の用具箱から布切れを取り出すと、鎧の掃除に取り掛かった。土ぼこりで汚れた胴鎧を磨き、肩当に付いた血(それが人の血か竜の血か、ノアにはわからなかった)をぬぐう。
次に籠手の掃除に取り掛かろうとしたとき、ノアは腕甲のひじの関節部に、金色の長い髪の毛が一本挟まっているのを見つけた。
「金色の髪?」ノアは髪の毛をつまんだ。「誰のだろう?」
もちろんアエーシュマ歩兵隊にも金色の髪を持っている者は大勢いるが、ノアの記憶にある限りでは、鎧に挟まっていた髪の毛のように、ルシアと同じくらい長く髪を伸ばしている者はいなかった。
「アルブラの町の人の髪かな? ファフニール人は金髪が多いって聞いてるし」ノアは長い金髪を指先でいじった。「でもこの色と長さ、あの人を思い出すな⋯⋯」
ノアはふっと悲しげな顔をすると、髪の毛を服のポケットにしまい、鎧の清掃に戻った。
最初のコメントを投稿しよう!