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 薄暗い裏路地を、小さな影が駆けていた。薄汚れたローブをまとい、フードを深くかぶっているせいで顔は見えなかったが、はためくローブのすそからのぞく細い脚が、その者が間違いなく子供であることを示していた。  路地の角を曲がったとき、子供は足を止めた。息は荒い。小さな肩は上下に揺れていた。  子供は呼吸を整えながら、心の中でささやいた。 本当にこっちに来てるの? 〈そうだ〉子供の頭の中に、声が響いた。老若男女すべての声を混ぜ合わせたような奇妙な声だった。  本当に、力を貸してくれるの? 〈貸してもらわねばならない。そなたの使命を果たすためにも〉  子供はうなずくと、まだ息が整い切らないうちに、再び路地を走りだした。
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