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朝、目が覚めると僕のではない香りに部屋が包まれている。
昨日、同じシャンプーを使っているはずなのに枕に残っている爽やかな香り。
僕は朝食を食べないのに、キッチンから食欲を誘ってくる味噌汁の香り。
起き上がって洗面台へ行けば、化粧品の香りがする。僕が化粧なんてするはずないのに。
こんなにも香りが漂って、たしかに君がいたはずなのに、どこを探しても姿が見えない。
仕方なしにキッチンへ行くと、少しだけ湯気が上っている味噌汁の鍋、そして横に置いてある小さな鍵。
僕は味噌汁をお椀に注ぎ、久しぶりの朝食を食べた。
中身は豆腐とわかめ。温かい。火を入れなくとも、まだ十分温もりがある。
なんだか現実を打ち付けられているようで、僕は味噌汁一杯を中々飲むことができなかった。
どうやらまだ、当分君のことを忘れることはできないみたいだ。
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