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 仕事中はマスクを外す必要がなかったとはいえ、食事をするときには外さざるをえない。 「裕香風邪?」  食事の準備を整えた私は、同期の美里を前にして、なるべく平静を保ったまま、マスクをとった。 「ううん、頬にニキビできちゃって」  少しおどけた風であっても、〈それ〉を口にするのは容易じゃないように感じる。自分の言葉であっても〈それ〉は耳に心地悪い響きだった。  そう言いながらマスクを外すのだから、相手の目線が私の顔の〈それ〉をとらえるのは仕方がない。それが分かっていても、何とも言えない窮屈さを感じるのは避けられないから、それを紛らわすように少し早口になる。 「入社してからまだ生活リズムに慣れてないからかな…できないように気を付けていたんだけど」 「あー私も、社内の人に会うのはだいぶ慣れたけど、社外の人と会うのは緊張するから、前日とかなかなか寝付けないもん。それで私も肌が荒れがちになっちゃって」  美里は何も悪くない。フォローまでしてくれている。それなのに、マスクの覆いがとられて、外にさらされる、頬に出来た〈それ〉のせいで、私の気持ちは沈んでいた。友達を前にして、そんなことに引っ張られている自分にも悲しくなる。大小関係なく、〈それ〉はわだかまりとして心に引っ掛かり、私を卑屈にする。何も、芸能人の投稿した写真にコメントされるような、美肌評価を望んでいるわけではない。ただ、人前に出るのに億劫にならない肌でいたい、肌のことを気にせず、友達や思いを寄せる人の前で振る舞えたらどんなにいいだろう。そんなことを思いながら、私は口にしたサンドイッチを、野菜ジュースで流し込んだ。
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