それはそれで

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 おかしいな。そう思うことは、今思えばたくさんあった。  お母さんはいつか、遺族年金と生命保険があるからね、と言った。当時、高校生だった私は、ある程度の見識は有していたと思う。母子家庭でも、まあまあしんどい思いをせずに済むものなのだな、と思ったことがある。生命保険は大事なんだ、と。  誕生日には、毎年2つのプレゼントをもらっていた。  お母さんにとっては、誤算だったのかもしかれないが、私は記憶力が良かった。子供の頃、お母さんは天国のお父さんが送ってくれたんだねぇと話していたのを覚えている。それは、いつからか、「財団みたいなのが、あってね。……うんと、そこから遺族の子には誕生日に贈り物があるのよ。うん、そうそう。そんな感じよ」と、説明が変わった。あまりに歯切れが悪いので、中学生だった私は、その話題は頭の隅っこに追いやったっけ。  要するに、今こうして下を向けられているこの人は、私とお母さんにお金を、私に毎年プレゼントを送ってくれていたのだ。  罪滅ぼしなのか、純粋に元妻と我が子への愛情はのことなのか。それは分からない。それをお母さんに聞くのも、それは忍びない。聞くならば、あと十年経ってからで良い。そんな気がしている。    ただ、事実がある。  一度も途切れず、この人は送ってくれていた人なのだ。一応は死んだとされたお父さんなのだ。  お母さんに倒された写真立てを起こしてあげる。  元気にリビングの方を向いたこの人は、昨日までと違って、腹立たしい笑顔に見える。それでいて、喜びが襲ってくるから不思議だ。  お父さん、生きてたんだね。  あなたを半分恨み、半分愛するよ。
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