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チラリと見上げて佳那汰は地面を足で弄りだす。
「俺、弁当さ……もうヤなんだよ。なんでお父さん出来たのに一緒に普通の御飯たべらんねぇの? 三人で食いたいじゃん、ご飯くらい」
ああ。そんなことだったのか。とも思うし、そうだよな。とも納得できた。
「あ! お母さんには言うなよ。お弁当……のこと」
一丁前に母親を気遣って言えなかったらしい佳那汰が、なんともいじらしくて初めて抱き締めたいと思った。まぁ、そこは男と男。やってもやられても恥ずかしいから、やらないでおいたが。
「明日、会社に言ってみるよ。たぶんちょっと時間が必要かもわかんないけど、出来るとおもう」
佳那汰は一気に機嫌を良くして、これまで見せた中で一番の笑顔をして「まじか!」と跳び跳ねた。
「マジだな」
「よし! 俺は大盛ツユダク食う」
子供らしく話はあっちにこっちに飛びまくるけど、ご機嫌な息子を見るのは良いものだ。
「しゃーねぇな」
残ったら俺が食ってやるよ。
心で呟いて、急に饒舌になった佳那汰と共に河原をのんびり歩いていった。
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