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制服姿の警官に声を掛けられ、勘違いである事を雅晴が説明し、鈴木も一緒に説明に荷担してくれた。鈴木はたぶん雅晴の父親に年齢は近いだろう。不思議なもので、そんな年が離れた二人なのにそこにはうっすら『連帯感』があり、同志のような気持ちで互いの足らぬところを補いながら警官と話していた。
警官から解放されると、傾きかけた日の光に向かい、鈴木とその息子は帰っていった。残された雅晴は川をチラリと見てから傍らに居る佳那汰に声を掛けた。
「腹へったな。帰りに牛丼食って帰るか」
驚く事に佳那汰がその提案に過剰なほど反応してみせる。
「え! マジで? いくいく! 俺ツユダクにしたい」
「え? なにその反応」
「なにってなんだよ。みんな食ったことあるって言ってんのに俺だけないんだ……」
確かに真琴は牛丼屋に行くようなタイプの人間じゃない気がする。ラーメン屋とかもあまり似合わない。安い外食ならファミレスを選ぶだろう。逆を言えば父子家庭だった雅晴はイタリアンレストランでパスタとか、お洒落なカフェでパンケーキを食べるなんて大人になるまで未体験だった訳だが。
「んじゃ、ツユダクな」
「大盛!」
「それはムリだろ」
車へと二人で向かいながら「ムリじゃねーし」と呟いた佳那汰だったが、急に足を止めたので雅晴も立ち止まる。
「あのさ、ずっと思ってたんだけど……雅晴って昼間仕事するのムリなの?」
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