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2000年代前半。
反社会的勢力の力が少しずつ勢いを失くし始めた歌舞伎町。
いくつかのお店を経た後、もう二度と戻って来ないと思っていたこの街にまた戻ってきてしまった。
しかしこれを機にご縁を持つことができたこのお店はとても優良店で、仕事意識が高いスタッフや女の子に囲まれた。
入店して1ヶ月も経たない頃だった。
スタッフに「今から入るお客さんダメだったら言ってね」と言われ初めて会ったお客さんは一目で様子が違うとわかった。
おそらく30代後半から40代前半だろうか。本当はもっと若かったのかもしれないが。
とにかく痩せていて根元から毛先まで全く栄養が行き渡ってないパサパサな髪の毛は引きちぎったように長短バラバラで色素も薄い。
明らかに血色の悪い肌色は、ずんぶんと前から助けを求めてはいるが、きっと長い間構って貰えてはいない。
笑い皺がとてもかわいらしいが、でもやはり助けを求める風貌を閉じ込めている笑顔というものは痛々しい。
「初めまして。はるです。」
仮に吉井さんとしよう。
吉井さんは痛々しくはあったが優しい笑顔で私を部屋に向かい入れると、すぐさまに「今日ね、病院の帰りなんだ。」と言って鞄から薬事法どうなってんの?とつっこみたくなるような大量の白い薬の袋を出して並べ始めた。
白い袋には「気分を良くするお薬です」とか「運転は控えて下さい」とかその他見慣れない説明が書かれてあった。
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